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第7話-3 聞こえたかな
打ち上げが終わり、春と共に春のマネージャーである松永が運転する車に二人は乗り込んだ。
春は何も話さず、いつものように少し微笑みを浮かべた表情をしている。
話ってなんだろう、と松山はぼんやり考え始めた。
知り合ってから4年、いつも春はこちらの話に相槌を打つだけで、そもそも春から話題をふられたことすら無かった。
そんな春がわざわざ自宅に呼び出してまで話したいことって。
ふと、そういえば、と松山は秋のことを思い浮かべた。
高校卒業の日、春と松山はこのドラマの撮影をしていた。
その時に春が高熱を出していることに気づき、その後遅れて卒業式に向かった松山はそのことを秋に話した。
秋が春に思いを寄せていることを知っていた松山は、秋に連絡を入れたら?と助言したのだが、あれからどうなったんだろう。
松山はその一件を思い出し、ふと春に尋ねた。
「そういえば、体調もう平気なの?」
すると春はうん、といつもの様子で答えた。
「春がいつも通りだったからすっかり忘れてた」
「はは、もう平気だよ ごめんね」
思い切って、松山は尋ねてみる。
「秋から連絡きた?」
すると春はふっと松山の表情を見て、小さく微笑んだ後、うん、と言った。
勇気が出ないといった様子だったけど、秋、ちゃんと連絡入れたんだな、と松山は感心する。
「秋、すごい心配してたよ」
そう続けて松山が言うと、春は再び、うん、とだけ言った。
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