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第7話-8 聞こえたかな
タクシーのアプリをチラリと見る。
なかなかマッチしない。
んー、と松山は立ち上がり、ふとカーテンを覗いた。
「わ、めっちゃ雨だ」
外は横殴りの雨が降り注いでいる。
雨のせいで配車依頼がかなり混み合っているようで、加えて、そもそもこの悪天候のせいでタクシー自体が運転営業を取りやめているらしい。
「さっきまで降ってなかったのに」
そう松山が呟くと、春が松永さん呼ぼうか?と言った。
いや悪いよ、と松山が言う。
するとしばらく間をおいて、春が言った。
「明日休みだよね?…泊まっていく?」
すると秋が顔を上げた。かなりの顰めっ面だ。
ふっ、と松山はそれを見て笑って言った。
「彼氏が不服そうだよ」
春が秋を見る。でも…と春が困ったように言う。
「…いいよ、俺らが呼んだんだし…泊まっていけば…」
不満そうな顔をしながらも、春のその表情を見て、秋は諦めたようにそう言った。
そんな秋に松山はくくく…と笑いながら、雨止んだらすぐ帰るから、と前置きしつつも、じゃあしばらくいさせてもらうね、と言った。
お互い風呂に入り、じゃあ、と二人が寝室へ向かう時、松山はニヤリと言った。
「してもいいけど…声聞こえないようにしてよ?」
すると秋は途端に赤面し、声にならない声を上げた。
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