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第7話-9 聞こえたかな

―― ―― 布団に入り、秋はすぐに春を引き寄せた。 「…次いつ帰ってくるの?」 「1週間くらいかな」 「…ながい…」 「ごめんね」 「…電話していい?」 「ふふ、いいよ」 「時差…どれくらいかな」 「13時間とかじゃなかったかな」 「んー…じゃあ寝る前連絡してくれる?」 「うん じゃあ…日本は昼くらいかな」 「…毎日かけても怒んない?」 「ふふふ、怒んないよ…嬉しいよ」 腕を解き、春の顔を秋は覗き見た。 優しい表情でこちらを見ている。 そっと秋が顔を寄せると、春はふっと瞳を閉じた。 唇が優しく重なる。 秋がゆっくりと舌を伸ばすと、春もそれに応えるように舌を伸ばした。 静かにゆっくりと深くキスを交わす。 水音が響く。 春がふと目を開け、ドアの外を伺うような視線を向けた。 それに、秋がきゅっと春の服を引っ張る。 そして再びキスを重ねる。 「…秋」 優しく静止するように春が名前を呼ぶが、秋は構わずキスを続ける。 そっと秋の手が春の服の中に伸びる。 再び春が、秋、と呼ぶが、秋はそれを聞かないで春の肌を撫で続ける。 「…だめだよ」 「なんで?」 「あっくんいる」 「いる…けど…」 秋は拗ねたように言う。 「…してもいいって…言ってたもん」 そう言った後、秋は春に覆い被さった。 そうしてまた、唇を重ねた。 秋の唇が春の首筋を撫で、捲った服の中、肌を這う。 春は小さく吐息をあげるが、秋を静止するように秋を腕で押した。 秋はそれに、泣きそうな顔をして言った。 「…しばらく帰ってこないんでしょ?」 「…すぐ帰ってくるよ」 「…でも…またすぐ行っちゃうでしょ」 「…春は…したくないの…?」 二人の静かな呼吸だけが部屋に響いた。 春はじっと、秋を見つめている。

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