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第7話-10 聞こえたかな

「…秋」 春が困ったようにそう名前を呼んだ。 秋はそれに小さく息を吐き、諦めたように春の隣に身体を落とした。 秋は唇を噛み、眉を下げて再び泣きそうな顔をした。 すると、春が身体を起こした。 そしてかけていた布団を引き、二人の頭まで覆い被さるように引き上げ、そのままその腕を秋に覆い被さるようにして置いた。 「…声、出さないでね」 秋が目を見開く。 春の目は、あの時と同じように、深く欲をうつしていた。 その目に、秋は身震いするほど身体が反応するのがわかった。

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