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第7話-13 聞こえたかな
二人の荒い吐息が布団の中で響いた。
熱で秋はじっとりと汗で濡れ、春も激しく息を繰り返していた。
秋はハッとして布団を剥いだ。
その瞬間、ひんやりとした冷気に包まれ、春はまだ呼吸を荒くしながら秋の隣に崩れ落ちるように寝転んだ。
「…大丈夫?」
秋が心配そうに尋ねると、春は呼吸を整えながら、うん、と優しく微笑んだ。
「秋も大丈夫?」
「うん」
春の呼吸が落ち着いた頃、秋はするりと春の胸に顔を埋めた。
そっと春の手が伸びて秋を包み込んだ。
「…聞こえたかな」
「どうかな」
「……ごめんね」
秋がそう小さく呟くように言うと、春はふふ、と息を漏らした。
そうして秋の髪をそっと優しく撫でた。
「…早く帰ってきてね」
「うん」
「…あっちで浮気しないでね」
「はは、しないよ」
秋は春の顔を見上げる。
その視線に気付き、春も秋に視線をやる。
手を伸ばし、秋の手が春の頬に触れた。
春の頬はまだ少し熱を帯びている。
「…ちょっとあつい」
「…うん」
「大丈夫?」
「…ふふ、うん」
「緊急搬送されたらどうしよう」
「ふふふ、恥ずかしいね」
困ったように笑ったその表情に、秋はそれが無性に愛おしくなり、春の首に手を伸ばして引き寄せるようにキスをした。
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