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第8話-3 松山の恋
「何それ………なんでそんな相手と会ってんの…?」
「だって…好きだもん」
そう言った松山がなんとも言い難い悲しい表情をしていて、秋は小さくため息をついた。
「…いつから好きなの?」
「中学の時から」
「中学!?!え、同級生?」
「違うよ、20個くらい上」
「20!?!え、じゃあ38くらい…?」
「正確には…多分36とかだったと思うけど」
「え、何で出会った人?仕事?」
「うん」
「ええ〜……じゃあ俳優?」
「まあそんなとこ、そこ詮索しないで」
「…なんで好きなの?その人のこと」
「なんでって…分かんない、気付いたら好きだった」
気付いたら好きだった、というのは、秋にも身に覚えがある。気付いた時にはもう、遅いのだ。
「言ってるの?相手には好きって」
「言ってない 言ったことない」
「え、言いなよ、じゃあ」
「はあ?だって相手好きな人いるんだよ?それ分かってて言えなくない?」
「けど…そういうことはしてるんでしょ?」
「そうだけど…」
松山は再び大きなため息をつき、そして言った。
「秋はすごいよね 振られまくっても一生告り続けて…そんで付き合えたんだし…」
秋が言葉に詰まっていると、松山の携帯がなった。
するとそれを一瞥し、松山がごめん、と言った。
「ごめん、その相手から 多分呼び出し 俺行くわ」
「えっ…行くの?」
「行くよ」
「でも…そんな都合いい相手になってていいの?」
松山は再びため息をつき、言った。
「もう会えないよりはマシだから」
そう言って、会計はするし好きなの食べて帰って、俺稼いでるから、と言い残し、松山は帰って行った。
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