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第10話-3 きらい
どうして俺じゃダメなんだろう。
どうして俺だけじゃダメ?
「もう淳しか呼んでないよ」
だったらどうしてもっとそばに置いてくれないの?
俺が春じゃないから?
もし春だったら、向井はもっと必死になってそばに置いたんだろうか。
あの夜、春の名前を何度も呼んだように。
あんな風に、求めるように、縋るように。
名前を呼んでほしい――。
気付けば、松山はボロボロと涙を溢していた。
その姿を見られたくない、と松山はそっとベッドから身を起こした。
すると、その手を向井がつかんだ。
松山はひくっと勝手にしゃくりあげるのを必死に抑えるようにして、身体に力を込めた。
「おいで」
松山は必死に堪えていたのに、その優しい声を聞いた瞬間、喉を奥がひくついて、堰を切ったようにしゃくりあげた。
我慢していた全てが溢れ出し、松山は肩を揺らして嗚咽を漏らして泣き崩れた。
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