69 / 236

第10話-4 きらい

すると向井はゆっくり身体を起こし、ベッドに腰掛けたまま泣き続ける松山をそっと抱きしめた。 「……しんどい…」 「向井さん…と…いると…しんどい…」 「……俺じゃ……だめなの?…俺だけじゃだめ…?」 向井はそう泣きじゃくりながら言う松山を抱きしめながら、静かに言った。 「淳しか呼んでないって言ったでしょ」 「…だった…ら……!…春の名前なんか……呼ばないでよ…っ…………俺じゃなくて……春呼べば…いいじゃん……」 「淳に…淳に会いたいって思ったんだよ」 「……っ…嘘だ……」 「本当だよ」 「……俺が…すぐ…っ……来るからでしょ…」 「違うよ…違う」 「…俺は…っ……便利屋じゃ…ない……んだよ…」 「…分かってるよ」 「分かってない…!」 「……向井さんは…ずるいよ……」 松山は泣きじゃくりながら必死で声を上げる。 「…俺はこういうこと…向井さんとしかしない……」 「しんどくても……意味ないって分かってても……」 「向井さんが好きだから……向井さんしか……好きじゃないから」 「でも…向井さんは……そうじゃないじゃん」 「……春が好きなら………しんどくても好きでいるだけいなよ」 「こうやって…俺とか……他の……向井さんのこと利用するようなやつで……誤魔化さないで」

ともだちにシェアしよう!