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第10話-6 きらい

「…信じて」 「…無理だよ」 「……お願い」 「淳…こっち見て」 「…いやだ……ぜったい…目…腫れてるし…不細工だし…今…」 「そんなことない…見せて」 そう言って向井はそっと松山の頬を優しく包んで顔を上げさせた。 涙で濡れた泣きじゃくる松山の顔を見て、向井は眉をひそめて、苦笑のように、でも限りなく優しい微笑みを浮かべて言った。 「…かわいい」 「……そんなわけ…ないでしょ……」 「…かわいいよ」 搾り出すように向井はそう言って、松山にそっと顔を寄せ、優しくキスをした。 松山はその瞬間、向井を押し倒すようにしてキスを返した。 何度も何度も、唇が離れてはまた触れた。 向井は松山を求めるようにして、強く松山を抱き寄せる。 何度もそうしてしてきたはずなのに、松山は感じたことのない激しい熱を感じた。 まだ流れ続ける松山の涙が、ぼたぼたとこぼれ落ちた。 そうして唇がふと離れた時、松山が向井の上にへたり込んだ。 「………出来ない…今日…できない…」 向井はそう言って泣きじゃくる松山をそっと抱きしめ、優しく言った。 「…いいよ…いい……何もしなくていいよ」

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