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第11話-4 その夜
――
二人は裸のまま、ベッドで向かい合って寄り添っていた。
まだ汗でじっとりと濡れた互いの肌に構わず、ぴっとりと身を寄せ合っている。
ふと松山が視線をあげ、向井を見つめた。向井もそれに気付き、ふっと優しい顔を向けた。
「…前にした時 春の名前何回も呼んでた」
「……ほんとはまだ…好きなんじゃないの」
向井は小さく息を吐き、あれは、と話し出した。
「あれは…淳が…春に嫉妬してるのが可愛くて」
「……はぁ?」
「春って呼ぶたびに強く突くから…余裕なくて可愛いなって」
「……はぁ…最低」
怒んないでよ、と向井はそっぽを向こうとした松山を引き寄せる。
「それに…」
「淳、そういうプレイ好きなのかと思って」
松山は少し呆気に取られた後、大きなため息をついた。
「…んなわけないでしょ…?馬鹿なの?」
んん、と向井に締め付けられた腕を解こうと松山は向井の腕の中で抵抗するが、向井がそれよりも強く抱きしめ、松山を離そうとしない。
松山はその抵抗をやめ、向井を可愛く睨みつけて言った。
「変態」
すると向井はふふ、と息を吐き、淳こそ、と言った。
「こんなおじさんに欲情するなんて変態でしょ」
「…20も下のガキに手出す方がよっぽど変態だし」
それはそうだ、と向井は小さく笑った。
「もっとおじさんになっても好きでいてくれる?」
「…努力してください」
「ははは、うん」
「…向井さんの白髪抜くの……俺の役目だから
…誰にもさせないで」
「…させないよ」
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