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第12話-2 かわいい
「…何があったの?」
まだ眠っている春に、秋はそう小さく問いかけた。
春は眠ったままだ。
知りたいけど、知りたくないような。
でも、知りたい――。
そんな思いの狭間で、秋は眠り続ける春の頬を優しく撫でた。
そっと春のおでこに唇を落とす。
春の髪から、ふんわりと春の匂いがした。
晴れた日によく干した洗濯物のような、陽だまりのような優しい香り。
ほのかに柑橘のシャンプーのいい香りが残っていて、秋は胸いっぱいにそれを吸い込んだ。
愛おしい気持ちで秋はいっぱいになり、ちゅ、ちゅ、と、秋は春の顔に何度も唇を落とした。
「…起きて、春」
そう声をかけても春は眠ったままで、秋は次第に面白くなって、昨日春が秋にしたように、そっと耳を舌で撫でた。
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