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第13話-2 謎の訪問者

―― ―― 深夜3時。 急ピッチでドラマの劇伴用のトラックを制作しているせいで、このところ毎日こうして深夜まで作業の日々だ。 んー、と背伸びをして、携帯をチラッと確認する。 春からの連絡はまだない。 今日も深夜まで撮影らしい。 少し息抜きでもしようと、秋は空になったコーヒーカップを持って部屋を出た。 すると廊下に座り込む人影に思わず大きな声を上げた。 「ワッ!!」 そこには、まだきっと帰宅したばかりの春がいた。 「えっ、なに、ど、どうしたの?なんでこんなとこいんの?」 すると春は突然出てきた秋とその声に少し驚いた顔をして、ごめん、と言った。 秋は春の前にしゃがみ込む。 「どうしたの?帰ったなら声かけてよ…?」 「や……邪魔しちゃ悪いかなって…思って…でも……」 「……顔見たいなって」 そう言って俯いた春に、秋は思わず眉を下げて、犬を撫でるようにわしゃわしゃと春の髪を両手で撫で回した。 春はそれにされるがままで、やめてよ、と優しく言ったが、なんだか少し嬉しそうに小さく笑った。

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