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第13話-8 謎の訪問者
春はそんな秋をふっと見つめ、言った。
「…お姉ちゃん」
「…へぇ?」
秋は素っ頓狂な声をあげる。
そして続けて尋ねた。
「お姉ちゃん…?…って…え?姉?きょ、きょうだい?」
「うん」
そして意味を理解し、秋は大きな声を上げた。
「ええええ?!」
ウカはコロコロと笑い声をあげ、そして言った。
「本名は柊花 って言うねん」
「あ、ああ…あの…今瀬…秋…と言います」
そう言って深く頭を下げた秋を見て、柊花は春に尋ねる。
「なに?春が友達とお泊まりとか珍しいやん てか友達とかおったんやな」
春はそれに苦笑し、泊まりっていうか秋も住んでるから、と言った。
「え?シェアハウス的な?」
「まあ…」
「へぇ…え、ほな、秋もいい?」
「え?」
「だから、泊まっていい?明後日まで」
「えっ?あ……俺は…いいです…けど…」
「ほないいやろ?」
そうして柊花は春に目線をやり尋ね、春は渋々と言った様子でそれに頷いた。
そうして春はいつものように仕事に出掛けていき、部屋には秋と柊花の二人になった。
柊花は春が仕事に出掛けてからも部屋探索を続け、秋はドギマギしながらそれを逐一眺めていた。
先ほど見逃した秋の部屋も遠慮なく覗き、ギター弾くん?と部屋に置かれた秋のギターを割と乱雑に鳴らした。
シンガーソングライターで…と秋が話すと、へえ凄いやん!なんか弾いてえや!とギターを渡され、秋はjamesの代表的な楽曲を即興で弾いてみせた。
それに柊花はひどく感激したようで、すごいやん!すごいやん!とはしゃいだ。
秋はそんな柊花の明るさに思わず笑みをこぼした。
何ぃ?と柊花に尋ねられ、秋は白状する。
「いや…なんか、春と全然違う性格なんだなって」
すると柊花は顔を顰めて、春って暗いからな〜と言った。
秋はそれに思わず吹き出した。
すると、柊花が言った。
「秋の曲、弾いてみてよ」
そう言われ、秋は少し迷ってから、高校3年の時、春に向けて作った曲を弾いて歌ってみせた。
途中、ふと柊花の顔を覗くと、柊花は真剣な顔をして、目を伏せてじっと耳を澄ませていた。
その顔は、春と瓜二つのようにそっくりで、秋は思わずどきりとした。
じゃらん、と最後のコードを鳴らし、一瞬の静寂が流れた後、ふっと柊花が目を開いた。
そして、言った。
「好きな人にかいたん?」
秋は一瞬どきりとして、でも素直にはい、と答えた。
すると柊花はふわりと笑って言った。
「めっちゃええ曲やなあ」
その笑い方がやっぱり春にそっくりで、そしてその言葉が嬉しくて、秋は照れるように笑った。
そうして柊花が立ち上がり、売れてるん?と聞いた。
いや全く…と言うと、あかんやん!とケタケタと笑い、でも多分いつか売れるで、だってめっちゃいい曲やもん、と言った。
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