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第14話-1 普通
そうして秋の部屋を出て、柊花が徐に寝室に向かった。
えっ、と秋が声をあげると、何?と柊花が言った。
い、いや…と秋が尻込みすると、柊花はそのまま寝室のドアに手をかけた。
柊花が寝室のドアを開く。
秋は思わず息を呑んだ。
そうして柊花がじとーっとこちらを見た。
秋は内心、何か"痕跡"が残っていたら…とかなり焦っていたが、必死に平常心を装い表情を取り繕った。
「な、なんです…か?」
「や、あんたら二人で寝てるん?」
「…え?」
「いやだって秋の部屋にベッドなかったし」
「あ、あ…いやいや、俺はその…ソファとかで」
「えー?めっちゃ理不尽なシェアハウスやな」
「あ…いや、その…その、交代制…?で…」
「こんな部屋余ってるんやからベッド買ったらええやん」
「いや…俺が…お金なくて…?」
「えー?春に買ってもらったらいいやん、まあまあ稼いでんのとちゃうん?」
「やー…そんな…悪いですし…」
へえ〜?と柊花は訝しげな顔をしたまま、ドスン、とベッドに寝転んだ。
「…あかん、ちょっと寝るわあ」
「あ、はい…」
そう言って秋はそっと寝室のドアを閉めた。
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