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第14話-5 普通
ドクン、ドクン、と規則正しく春の鼓動は鳴り、秋はそれをじっと聴いている。
「…春」
「…ん?」
秋はいたずらに、つぶやくように言った。
「…好き」
すると春はいつものように優しくふわりと笑った。
また秋は耳を澄ます。
すると、先ほどまで規則正しく等間隔に鳴っていた春の心臓が、少し早まったのが分かった。
それに、秋は思わず笑みを浮かべた。
秋が何か企んでいるのが分かったのか、春がそっと顔を下に向けた。
「…なに?」
優しくそう尋ねる春に、秋はそっと唇を重ねた。
そうしてまた、秋は春の胸に顔を埋めて耳を澄ます。
するとやはり、春の鼓動はまた早まっていた。
ふふ、と秋は声を漏らす。
不思議そうな顔をする春に、秋は白状する。
訳を聞いて、春は困ったように微笑んだ。
「いつもこうなの?」
「…そうだよ」
秋は嬉しそうに笑みを溢す。
そしてニヤリ、として尋ねる。
「…初めてキスした時も?」
すると春は小さく微笑みながら、言う。
「…あの時はもっとしてた」
「ええ〜今は?」
「…もう何回もしたから」
「毎回初めてみたいにドキドキしてよ」
そう言うと春はぎゅうっと腕の力を強めて秋を抱きしめた。
「…くるしい〜」
そう言ってトントン、と秋が春の背中を優しく叩くと、春がひゅっと力を緩めた。
秋は再び、春に唇を重ねる。
ちゅ、と触れるだけのキスから、次第に深くなる。
そっと秋が春の胸に手を当てる。
ドクドクとこれまでより春の心臓は早く動いている。
キスをしながら秋は思わず口角を上げてしまう。
春は薄く目を開き、少し睨むように秋を見る。
それにまた秋はふふ、と息を漏らす。
そうして何度も何度も触れたり離れたり、互いの舌先が触れて絡まり、遊ぶようにキスを繰り返した。
その時。
ガラ、と突然、寝室のドアが開いた。
咄嗟に二人は離れる。
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