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第14話-6 普通

「あのさ〜リビングの…」 と言いながら入ってきた柊花は、パッと言葉を発するのをやめた。 そうしてじっと二人を見つめたあと、スタスタとベッドのそばまでやってきた。 春が徐にベッドから身を起こした。 すると、柊花が春を見据えていった。 「キスしてた?」 ズバリな問いかけに、秋は思わず春の背中に目をやる。 春は何も答えない。 そうして沈黙のあと、柊花が再び口を開いた。 「…付き合ってんの?」 秋はその問いに、咄嗟に誤魔化そうとベッドから身を起こして声を出そうとした時、春が静かに口を開いた。 「そうだよ」 秋は思わず視線を柊花に向けた。 柊花は表情を変えることなく、ただ春を見ていた。 そうして永遠にも思えるような沈黙の後、柊花が突然、春の頬を片手で挟み込むように掴んだ。 「なんで嘘ついてたん」 「…ついてない」 「シェアハウスちゃうやん」 「……柊花が勝手にそう言った」 「まあ、って言うたやん これ同棲やん」 「…あんたもやで」 そう言って柊花はジロ、と秋に目線をやった。思わず秋は全身に力が入った。 「普通に毎日このベッドで寝てるんちゃうん」 「…は…はい…」 「彼女ちゃうやん」 「……はい……」 はあ、と柊花はため息をつき、春の頬を掴んでいた手を解いた。 「同棲なんやったらホテル取ったわ…」 そうして柊花はキッ、と春を睨んで言った。 「あんた忙しいんやろ?!毎晩あんな夜中に帰ってきて朝早く出ていって」 「そんなんで泊まらせてって言われても嫌やって言わなあかんやろ 秋可哀想やろ!」 秋は柊花がまるで何を言ってるのか理解できず、口をぽっかり開けた。 すると春がはは、と息を漏らして笑うのが分かった。 秋は咄嗟に春の背中に目をやった。

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