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第15話-8 秋の誕生日
すると、すぐに姉の今瀬友希 がリビングに入ってきた。
そしてニヤッと笑って秋に言った。
「怒られてやんのー」
それに再び秋はため息をつき、元気してた?と力無く尋ねた。
「元気元気」
そう言って姉はソファに腰掛けテレビをつけた。
そんな姉の後ろ姿を眺めながら、秋は携帯を取り出し、春とのトーク画面を開いた。
一緒に暮らし始めてからは日中はほとんどやり取りしておらず、仕事が終わった春から「今から帰る」とのメッセージがくるのみで、あとは週に一度、春からその週の仕事のスケジュールが送られてきていた。春はマネージャーから送られてきているメッセージをそのまま転送していて、秋はそれを頼りに、毎朝春を起こしているのだ。
意味もなく画面をスクロールする。
"壱川春 個人スケジュール"
その後に並ぶ過酷な労働時間を改めて見て、秋はため息をつく。
そんな忙しい合間にわざわざ時間をとって秋の親と話すなんて嫌だろうなぁ、と秋は思った。
春と親しい人たちならまだしも、ああして怒っている顔も見たことのない親と話をさせて春に負担をかけることを思うと秋は鬱々とした気持ちになった。
すると姉の友希が黄色い歓声を上げた。
その声に反応してふとテレビ画面に目をやると、そこには大きく春が映し出されていて、秋は思わずわっ、と声を上げた。
友希はそんな秋に構わず、かっこいいわぁ、と恍惚とした声を上げた。
「秋、壱川春と友達じゃないん?」
それに、秋は素っ頓狂な声をあげる。
「やって芸能科の高校やったんやろ?なんか繋がりで壱川春と友達になれたりせえへんかったわけ?」
まさかその壱川春が恋人で今まさに同棲している、なんて言えるわけもなく、秋はいやいやいや…と咄嗟に秋は否定した。
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