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第15話-9 秋の誕生日
すると母の美代子がリビングに戻り、それに友希が声をかける。
「お母さん、続き見るで」
すると美代子はあら、と先ほどまでの怒りを忘れたように急いで友希の隣に腰掛けた。
二人は春が映し出されるたびにはぁ〜っと声を上げ、秋は思わず"血は争えないんだな"と頬を緩めた。
秋もそのドラマに次第に夢中になり、あっという間にドラマはエンディングを迎えた。
そうして美代子が立ち上がり、ニヤけた面をしている秋をピシャ、と叩き、連絡したんか?と尋ねた。
「え?誰に?」
「誰にとちゃうわ、住ませてもらってる子に決まってるやろ」
「だから…」
「だからちゃうわ 早よしい」
そして続けて言った。
「なんもその子のこと責めようなんて思ってないで あんたが世話になってるんやったらお金のことちゃんとしようって思ってるだけ 住ましてもらってるんやったらちゃんと半分払わなあかん」
「いや半分って…」
そう言って、秋は春と暮らす家を思い浮かべる。
詳しく聞いたことはないが、おそらくその家賃は一般人が到底払えるような金額ではないだろう。
半分でもそれは数十万、下手したら数百万レベルなのではないだろうか。
秋はふとマンション名で検索をかけてみる。
すると芸能人御用達!という記事がヒットし、ふとそこに書かれたマンションの家賃を見て目を丸くした。
想定賃料200〜500万、とそこには書かれており、秋は改めてそこに住まわせてもらっていることに恐れ慄き、震え上がった。
そして情けなく声を上げた。
「俺払えへん」
すると美代子ははあ、とため息をつき、ぼそっと言った。
「…大学出る年までは家賃だけは面倒見たるから」
「…え?いいの…?」
「……大学の学費の代わりな あれやで、ちゃんと後で返してもらうで」
そう言われ、秋は母の気持ちにじんわりと嬉しくなったが、すぐにハッとして言った。
「…お母さんも払われへんと思う」
「…なに、そんなええとこ住んでるん?」
「うん」
生意気やな、と秋の携帯を奪い取り、その検索ページに目をやる。
そしてじっとそれを眺めた後、言った。
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