116 / 236

第15話-11 秋の誕生日

―― ―― 深夜。 母の美代子と姉の友希は深夜にも関わらず化粧を施したまま、そわそわとその時を待っていた。 仕事から帰った父すらもなんだかそわそわとして、ビールを煽りながらダイニングテーブルの前、椅子に腰掛けていた。 すると秋の携帯が鳴り始め、今瀬家全員がビシッ!と背筋を伸ばした。 秋が電話に出ると、もしもし、と春の優しい声が耳に響いた。 「あっ、あ…もしもし」 「うん」 「あっ…ご、ごめんね…ほんとに…」 昼間、春と一緒に暮らしている、ということのがバレた後、秋は渋々、春にメッセージを入れた。 " 親に詰められて今友達の家に住ませてもらっていると言ったら、その友達に電話させろって言われ、それで流れで春と暮らしてるって言っちゃって " そのメッセージに春はそうなんだ、と一言返してきたあと、今日の夜遅くでもいいなら、と追加でメッセージを送ってきてくれていた。 そうして今、仕事を終えた春から電話がかかってきたのだ。 申し訳なさそうに謝る秋に、春はこちらこそごめんね、遅くなっちゃって、と言った。 それに秋は見えないのにぶんぶんと首を横に振る。 すると姉の友希が横で、テレビ電話!テレビ電話にして!と嬉々とした表情で小声で言ってくる。 秋はあのさ…と再び申し訳なさそうな声を上げ、テレビ電話に出来る…?と言った。 春はうん、と軽く返事をし、えっと…どうするんだっけ、と言い、ガサガサと音を立てた。 少し前、春が海外での映画撮影を行なっていた際、毎日秋が電話をかけ、その時にテレビ電話の仕方を秋は春に教え込んでいた。 しかしそうしてテレビ電話をすることもしばらくなかったからか、春はそれに少し手間取っている様子だ。 そうしてしばらくガサガサと音が鳴り続けた後、パッと画面に春が映し出された。 母の美代子と姉の友希は、思わずハァー!っと声にならない声を上げ、二人して口元を手で覆い隠した。

ともだちにシェアしよう!