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第15話-12 秋の誕生日

春はえっと…と言いながら、携帯をテーブルに置くような仕草をした。 そうしてやっと画面を見て、映し出された秋と美代子と友希に、いつもの微笑みを浮かべた。 友希が少し声を上擦らせ、「秋の姉のっ!友希です!」と自己紹介すると、春は再びニコッと笑い、ペコリと頭を下げて、壱川春です、と言った。 友希はし、知ってます〜…と浮ついた声を上げ、隣にいた秋をバシバシと叩いた。 そうして母の美代子も外向けの高い声で「母の今瀬美代子です」と言った。 春は再びニコッと微笑み、頭を下げ、一回言ったけど…と迷った様子を見せつつも、もう一度、壱川春です、と丁寧に言った後、少し眉を下げて笑った。 美代子はギロっと秋に視線を向け、ほんまもんや、と言った。 秋はそれに思わず吹き出した。 「息子がほんまに…お世話になってるみたいで…」 「ああ…いや、全然…僕もお世話になってます」 「何を言いますか…ほんまにもう…すいません…」 「ああ…いや…」 そう言って困ったように画面の向こうでたじろぐ春に、秋はほんとごめんね、と言った。 そうして美代子は続けて言った。 「ほんまに…迷惑じゃないですか?」 すると春は首を横に振り、全然、むしろ助かってます、家のこと全部任せっきりで…と言った。 すると美代子は秋を強く叩き、当たり前です!あんたなんでもやりや!と言った。 「ほんまにこのままお世話になっててもええの?」 「はい」 「その…家賃とか…」 「ああ…全然、他に使うこともないので…」 すると美代子が尋ねた。 「壱川くんは…なんか嫌いな食べ物とかある?」 え、と春は短く声を上げ、少し迷った様子を見せてから、ピーマンとか…と言った。 するとその返答に姉の友希は小さく悲鳴をあげて悶え、か、かわいい〜…と小さな声を捻り上げた。 美代子ははは、と笑い、分かった、ほんならピーマン以外、なんかおうちに送ってもいい?と言った。 「え…あ…いいんですか?」 「いいよ!秋になんか作ってもらって!あんた料理できるやろ?」 「うん」 「あんた変なもん壱川くんに食べさしたらあかんで」 分かってるよ、と拗ねたように秋が言う。 そのやりとりに、春がふふ、と優しく微笑んだ。 それに三人がバッ!と視線をやる。 それに気づいたのか、春がふっと驚いた顔をしてから、言った。 「お母さんもお姉さんも…秋にそっくりだなって思って」 そういうとええ〜?と二人して甘い声を上げ、顔を覆い隠した。 そうしてしばらく他愛もないやり取りをした後、後ろからひょっこりと秋の父が顔を覗かせた。 「壱川くん、迷惑かけてごめんな〜」 春はそれに、いえ、と言い、またペコリと頭を下げた。 そうしてじわーっと画面に近づき、ほぉ…と声を上げた。 「確かにほんまに綺麗な顔やなあ うちの女子たちは壱川くん出てるドラマ全部見てるんやで」 そう言った父に、言わんでええって!と美代子と友希は画面外に押しやった。 春は少し照れくさそうに小さく笑った。

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