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第16話-1 初めてのデート

その日、秋は朝からそわそわと落ち着かなかった。 それは、春との初めての外食が夜に待っていたからだ。 春と付き合ってから、というか、付き合う前から、二人で外を出歩く、なんてことをしたことがなく、春と秋はろくにデートすらしたことがなかった。 すでに広く顔がさす春は普段一人でも外を出歩くことをせず、仕事帰りにコンビニに立ち寄る、なんてことも躊躇うほどだった。 マスクや帽子で変装しても、スラッとした背格好やふと覗いた印象的な瞳で、春はあっという間にバレてしまうのだ。 だから、日用品の買い物は秋が買いに行ったり通販で頼んだりで済ませていた。春が一人暮らしを始めて秋が来る前までは、そういったことはマネージャーの松永が世話を見ていたらしい。 外食は、秋がねだった秋の19才の誕生日プレゼントだった。 加えて、秋は、あと2つお願いを聞いてほしい、と春に頼んでいた。 ひとつは、秋の運転で店に向かうこと。 高校の卒業祝いにと、秋は両親から車の免許を取らせてあげる、と教習所の料金を払ってもらっていた。そうして晴れて免許を取得し、秋はとにかく運転がしたくてうずうずしていた。 時たま高校の友人である高野快斗を呼び出し遊びがてらドライブをしていたりもしたのだが、もっぱらそれは練習といった気持ちで、秋はいつか春とドライブがしたい、と前々から企んでいたのだ。 やっと運転にも慣れてきた今なら、と秋は春にそれを頼み込んだ。

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