124 / 236

第16話-4 初めてのデート

「春はなんでも似合うからな〜」 「ふふ、そうかな」 「仕事の時はいつもお任せ?」 「うん」 「こだわりとかないの?」 「ないよ」 「えーなんで?」 「なんでって…ん〜…」 そう言って春は考えたあと、なんでも似合うから?と冗談っぽく笑った。 秋はそれに吹き出し、自分で言った!と大袈裟に目を見開いてみせた。 春はそれにあはは、と楽しそうに笑った。 結局秋は色々と春の髪を触った挙句、春の顔がよく見えるように、前髪を上げてフォーマルに仕上げた。 カチッとしたヘアスタイルの春を眺め、秋はまたへにゃあ、と眉を下げて笑う。 「秋はしないの?」 「春やってよ」 「えー、僕下手だよ」 そう言いつつも、春がそっと秋の髪に触れる。 鏡越しになんとも真剣な春の表情が見えて、秋はまた吹き出した。 なに?と春はそれでも真剣に秋の髪を触っていて、秋は春が愛おしくてたまらなくなり、振り返ってちゅ、と軽く春にキスをした。 あ、今やってるから、と春は言うが、鏡を覗くと少し笑みを浮かべていて、秋はまたそれを見て愛おしさが込み上げた。 結局春はうまく出来ず、秋がそれに大笑いし、秋は自分で髪をいつものようにセットした。 少し拗ねたような顔をした春を秋は愛おしそうに抱きしめ、言った。 「春、不器用だね〜」 「…うん」 「かわいい」 「かわいくないよ」 秋は再びかわいい、と呟いて春にまた軽くキスをして、そろそろ行こっか?と声をかけ、二人は家を出た。

ともだちにシェアしよう!