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第16話-4 初めてのデート
「春はなんでも似合うからな〜」
「ふふ、そうかな」
「仕事の時はいつもお任せ?」
「うん」
「こだわりとかないの?」
「ないよ」
「えーなんで?」
「なんでって…ん〜…」
そう言って春は考えたあと、なんでも似合うから?と冗談っぽく笑った。
秋はそれに吹き出し、自分で言った!と大袈裟に目を見開いてみせた。
春はそれにあはは、と楽しそうに笑った。
結局秋は色々と春の髪を触った挙句、春の顔がよく見えるように、前髪を上げてフォーマルに仕上げた。
カチッとしたヘアスタイルの春を眺め、秋はまたへにゃあ、と眉を下げて笑う。
「秋はしないの?」
「春やってよ」
「えー、僕下手だよ」
そう言いつつも、春がそっと秋の髪に触れる。
鏡越しになんとも真剣な春の表情が見えて、秋はまた吹き出した。
なに?と春はそれでも真剣に秋の髪を触っていて、秋は春が愛おしくてたまらなくなり、振り返ってちゅ、と軽く春にキスをした。
あ、今やってるから、と春は言うが、鏡を覗くと少し笑みを浮かべていて、秋はまたそれを見て愛おしさが込み上げた。
結局春はうまく出来ず、秋がそれに大笑いし、秋は自分で髪をいつものようにセットした。
少し拗ねたような顔をした春を秋は愛おしそうに抱きしめ、言った。
「春、不器用だね〜」
「…うん」
「かわいい」
「かわいくないよ」
秋は再びかわいい、と呟いて春にまた軽くキスをして、そろそろ行こっか?と声をかけ、二人は家を出た。
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