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第16話-6 初めてのデート

そうして店に入り、優しげな店員が声をかけてくる。 予約の松江です、と春が言うと、松江様ですね、こちらに、と個室に二人を案内した。 そうしてドリンクのオーダーを聞いたあと、店員はすぐに下がって言った。 秋は尋ねる。 「松江?」 「ああ、母親の旧姓で」 外で名前聞かれたらそう名乗ってるんだ、と春は言った。 「でも…顔見られちゃったし春ってバレてるよね」 「どうかな」 「でもあれか、こういうとこって…芸能人御用達!みたいな?」 「んー…でも仕事の打ち上げで一回来たことあって」 「そうなんだ」 するとノックの後、店員が入ってきて、ドリンクを運んできた。 そうしてテーブルにドリンクと共に、前菜を丁寧に置き、去っていった。 「誕生日おめでとう お祝いのご飯、遅くなっちゃってごめんね」 秋は春の言葉にぶんぶんと首を横に振り、いただきます!と手を合わせた。 「…美味しい!なんか…なんかめっちゃ美味しい!」 サラダを一口食べ、秋は目を見開いて言った。 春はそれに眉を下げ、そう?と笑った。 それからも次々と肉が運ばれてきて、秋はそれに逐一美味しい!美味しい!と声を上げた。 春は秋がそう言うたびに嬉しそうにそれに笑い、美味しいね、と律儀に返事を返した。

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