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第17話-4 思い出の場所

そうして教室を出て、職員室へ向かう廊下を歩いていると、秋が最後ここ行きたい!と指さしたのは、社会科準備室だった。 その教室は、春と秋を含む仲の良かった友人5人でよく昼食をとっていた教室だった。 社会科の担当だったおじいちゃん先生がそこに毎日いて、うるさいから来るな、と秋らを邪険に扱いつつもそこにいることをなんとなく許してくれて、秋らはよくそこを溜まり場にしていたのだ。 秋は教室の中央に聳え立つ本棚に並ぶ大量の本の背表紙を指で撫でつつ奥へ進んでいき、いつもそのおじいちゃん先生が鎮座していた教室の隅に敷かれた2畳ほどの畳に腰掛けた。 畳の下にはスノコが引かれており、少し段差のようになっていてちょうど腰掛けるのに最適で、当時もそこに秋らが腰掛けて、よくそのおじいちゃん先生を怒らせていた。  春も同じようにそこに腰掛けた。 隣に座り、二人の小指同士が微かに触れた。 秋がその手をそっと重ねた。 そうして秋はゆっくりと春に顔を寄せて再び春に口付けし、春もそれに応えた。 キスはだんだんと深くなっていき、秋は春の手に触れている方とは逆の手を春に伸ばし、春の首筋をつーっと指先で撫でた。 閉じていた春の目が開かれ、秋の視線と交わった。 校庭に立つ大きな照明の光だけに照らされた春の瞳は、いつもより深く蒼く澄んでいて、秋はその瞳に思わず吸い込まれそうになる。 秋は猛烈な衝動に駆られ、キスを繰り返しながらそのまま春を押し倒した。 そうしてゆっくりと春のジャケットのボタンを外す。 春はそれを止めることなく、ただ秋のキスに応えて何も言わない。 「…いいの?」 秋がそう尋ねると、春は言った。 「…最後まで出来ないよ」 「……なんで?」 「何も持ってきてないよ」 「…触るだけだったらいい?」 「…いいけど…」 春は"あの目"で、言った。 「……家帰ってゆっくり…したくない…?」 秋はごくりと生唾を飲み込んだ。 そうして春は起き上がり、そっと秋を引き寄せ、秋の耳元で小さくつぶやくように言った。 「……早く帰ろう」 そうして藤崎への挨拶もそうそうに、二人は校舎を飛び出るように車に乗り込み、自宅へ戻った。

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