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第17話-5 思い出の場所
玄関。
せっかくの揃いのオーダーメイドスーツのジャケットは廊下に荒々しく脱ぎ捨てられ、二人は荒く吐息を上げ、互いに吸い付くようにキスを交わしていた。
秋のネクタイはすでに解かれて首からだらしなく下がり、そうして首元の開いたシャツから覗いた秋の鎖骨に春は夢中で唇を落とす。
春はシャツ越しに秋の身体のラインに沿って、手のひらで撫で回す。
そうしてシャツをズボンから引き上げ、その隙間から手が差し込まれた。
春の指で身体を存分に可愛がられ、秋は小さく声をあげる。
秋も春のネクタイをゆっくりと緩めるが、あ、と小さく呟く。
「……ん?」
春がキスの合間にそう声をあげると、秋が春の目を覗き込むように言った。
「…春がネクタイ外すとこ見たい」
「……なんで…?」
「……え〜…ずっと想像してたから」
春は秋のその言葉にふっと笑い、そうして抱き寄せキスを繰り返しながら、風呂場前の洗面台に秋を押しやる。
そうして秋を洗面台に持ち上げて座らせ、もたれかかるように左手を洗面台に置いて、右手でネクタイをくい、と緩めて見せた。
秋はそれに満足そうな顔をして、もう一回、とねだるように言う。
春はまたやって見せるが、秋からの熱烈なディレクションが入る。
「…なんかこう…邪魔そうにさ…乱暴に解いて?」
そう言って秋はすでにゆるゆるの春のネクタイをもう一度首元まで上げた。
春はそれにくく、と笑い、それでも秋に付き合い、目を細め眉下げて表情を作って荒々しくネクタイを乱暴に解いて見せた。
それに秋はん〜!!と嬉しそうに声をあげる。春はまたくく、と笑い、満足ですか?と秋に問う。
満足〜と秋は両手を春に伸ばして抱きしめ、再び二人は顔を寄せてキスをする。
そうして秋は春によってスーツを脱がされ、春がシャワー浴びる?と甘えたように言った。
「春も一緒に入る?」
「…見てもいいの?」
見てもいいの、とは、準備のことだろう。
秋はそれを思い出し、やっぱダメ、と春の目を見つめてそう言い、浴室へ向かった。
準備を終えてすぐに浴室を出ると、春が洗面台を背もたれにするようにして寄りかかってじっと待っていた。
「あれ、ソファで待ってて良かったのに」
そう言って秋がタオルで髪を拭うと、春が待ちきれないと言った様子でまだ濡れた秋を引き寄せる。
「…濡れちゃうよ?」
「ん〜…」
「…春も入ってくる?」
「…うん」
そう名残惜しそうに秋を見つめ、春も浴室へ向かった。
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