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第18話-2 冬の日
テレビから流れているのは、秋が劇伴の制作を務めたドラマだ。
ドラマは向井の脚本の力もあり安定したヒットを見せ、秋は楽曲制作にあたりすでに脚本を読んではいたが、実際に役者が演じる映像とそして自分が制作した音楽が実際に流れたのをこうして改めて見て、ひどく感激していた。
普段食事中はテレビなどをつけていてもちらりとも見ない春も、その日ばかりはそのドラマをじっと見ている。
「これ?」
シーンの途中、流れたBGMに春が反応して尋ねる。
秋は嬉しそうに笑い、うん、と頷いた。
「すごいね」
秋はその春の言葉に、え〜?と嬉しそうに笑った。
「また決まったんだよね」
「うん、でもまた向井さんのおかげだけどね」
このドラマの劇伴制作が終わる頃、また向井から次のドラマの劇伴の制作依頼が来ていた。
それ以外にも向井づてにCMなどで使われる音楽制作などもちょくちょく入るようになり、秋は秋で忙しい日々を送っていた。
「秋のが気に入ったんだね」
その言葉に、んーでも、と秋は言った。
「嬉しいけど…でも俺は歌手として成功したいからさあ…」
その言葉に春はそっと微笑んだ。
「ま、引き続き頑張ります」
うん、と春はそれに頷き、ゆっくりと鍋の具材を口に運んだ。
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