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第18話-3 冬の日
「おいしい、これ」
鍋用の薄い餅を食べ、春がつぶやいた。
「ああ、それね、うちのお母さんが送ってくれたやつ」
「そうなの?…なんかお礼しなきゃね」
「ええ?いいよいいよ、春に気に入られたくて送ってきてるだけだって」
「あはは お母さん毎月送ってくれてるね」
「そう、まあ助かるけどさぁ」
二人じゃ食べきれないってー、と秋は顔を顰める。
「…お正月、実家帰る?」
春がそう尋ねた。
「え?あー…考えてなかったけど…春、休みは?」
「ないかな」
「えー…じゃあ帰ろうかな…んー…でも心配だしな」
「心配?」
そう不思議そうに言った春に、秋が顔を寄せて言った。
「ちゃんと春がご飯食べるかなーとか」
春がふふ、と笑い、言った。
「食べるよ」
「嘘だ〜 春すぐご飯サボるから」
春は仕事場ではあまり食事を取らないらしく、家に帰ってきてから秋が作った食事をとる。
今日何食目?と聞くと、いつも決まって1食目、と答えるのだ。
そんな春に秋は顔を顰め、ダメだよちゃんと食べなきゃ、と言うのだが、食べたら眠くなるから…と言って春はあまりそれを聞き入れない。
以前春が病気で倒れた時も、あの時期は春の所属するアイドルグループのデビュー前でかなり多忙で、食事よりも睡眠を優先してデビュー前はもう何日も何も食べていなかったらしい。
食べること自体は嫌いではないようだが、そこまで食にこだわりがなく、春は毎日同じ食事でも何も気にならないらしい。
だがその日の献立を伝えると嬉しそうな顔をしたりなど、好きな食べ物はあるらしく、秋は春を喜ばせたいと毎日献立に頭を悩ませていた。
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