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第18話-8 冬の日

翌朝、松永に言われた時間より少しだけ早く、春を起こした。 もともと集合時間が早くなる前から、秋は、春をその時間に起こすつもりだった。 というのも、朝、春を予定より少し早く起こして、まだ寝ぼけている春を秋があの手この手で誘って、そうして二人の甘い時間を過ごす、というのがなんとなくの習慣になっていたからだ。 この日も前日まで秋は1時間ほど早く春を起こして…と企んでいたのだが、夜に春の日記を盗み見て、今の忙しい時期に春に無理させたくない、ゆっくり春に起きてもらおう、と考えた。 そうして少しだけ時間の余裕を持って春を起こそう、と予定より30分だけ早く起こすことにしたのだ。 「春」 腕の中で眠る春に声をかけるも、それだけではやはり春はぴくりともしない。 秋は春に回した手で春の髪を撫で、声をかけ続ける。 まだ時間に余裕はある。 無理やり腕を引いて起き上がらせる、と言った松永直伝の最終手段はまだ使わなくてもいい。 「春〜…朝だよ〜…」 そうして何度か声をかけ続けていると、春がもぞ…と腕の中で動いた。 お、起きたかな、と顔を覗く。 しかし春は、秋の胸に顔を埋め、んん…と言って動かなくなった。 いつもならそんな可愛い動きをされたらたまらず春にキスをして誘い込むのだが、今日の秋は違う。 ゆっくり春を起こして、無理なく仕事に向かってもらう。 秋にはそんな大志があった。 「春、しゅ〜ん」 そう言って秋は胸に潜り込んだ春の頬を優しく手のひらで撫でる。 するとゆっくりと春が瞼を開き、潤んだ瞳で秋を見上げた。 付き合って、そして一緒に暮らし始めて早10ヶ月ほどか。 ほぼ毎日こうしてそんな目を見ているのに、秋はいまだに新鮮にドキドキとした。

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