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第19話-1 春の誕生日
慌ただしく時は過ぎ、季節は春に差し掛かっていた。
年末年始、春はほとんど家におらず、秋はずっとテレビにしがみついて春の出る生放送の音楽番組を見て、一人カップ蕎麦を啜っていた。
最近は一人だと、どうしてもそういう雑な食事になってしまう。
一人暮らしの時は毎食律儀に何かしら作ってはいたものの、いざ春と暮らし始めて共に食卓を囲む楽しさを知ってしまってから、自分のためだけに何か用意するのはなんだか気後れしてしまうようになったのだ。
加えて秋もなんやかんや制作で忙しく、自分の食事のためだけに時間を使うのは惜しい、と思ってしまうようになっていた。
そうして秋は結局、忙しさを理由に実家に帰ることもせず、ただ深夜に帰宅する春を迎えて翌早朝、また春を送り出し、昼間はカップ麺を啜りながら制作をする、というルーティンワークに勤しんでいた。
春は年明けすぐ、ほぼ同時期にドラマと映画の撮影にクランクインし、加えて3月に控えていたグループのデビュー1周年ツアー初日に向けたリハーサルに明け暮れていて、昨年の春頃と同じくらいの忙しい日々を過ごした。
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