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第19話-2 春の誕生日
やっと春がツアーの初日を終えて撮影も少し落ち着いた頃。
秋は一人、部屋で壁のカレンダーを眺めて考え込んでいた。
あと2週間ほどで春の誕生日だ。
付き合って最初の春の誕生日は、何が欲しい?と聞くとカレーが食べたい、と言われ、深夜に帰宅した春と、秋の作ったカレーを食べた。
あの頃は事務所を辞めたばかりで仕事もろくになく、それでも何かあげたいと少しいいブランド物の靴下をプレゼントしたのだが、今年は秋も少々ばかり稼いでいる。
何かとびきりのプレゼントをあげたい、と秋は意気込んでいた。
それに――。
今年は二人が20歳を迎える年だった。
記念すべき日、秋は何をプレゼントすべきか、とひどく頭を悩ませていた。
春は付き合った当時からさらに名を広め、今やどの局をつけてもCMやドラマや音楽番組、四六時中テレビに映っている。
ふと街に出ると街中に春が広告塔を務める企業のポスターが貼られ、本屋の雑誌の平積みの棚にはぽっかりと空いた場所が何箇所もできていて、それは春が表紙に起用された雑誌がどれも完売してしまって出来ている穴だった。
そうして今芸能界一の売れっ子として忙しく働き、何百万もする家賃の家に住んでいる。
加えて春は秋の分の生活費も全て出してくれていた。
秋がどれだけ頼み込んで払う、と言っても、家事やってくれてるしご飯も作ってもらってて申し訳ない、と絶対に受け取ってくれなかった。
きっと、いくら秋が大枚を叩いてブランド物をプレゼントしても、春にとっては子供のお小遣いで買ったレベルに感じるのだろう。
そんなこと春は思いもしないだろうし喜んでくれるだろうが、でも――。
秋にも男のプライドがあった。
何が何でも、春を心から喜ばせたい。
秋はそんな決意に身を固め、息を荒く部屋を出た。
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