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第19話-5 春の誕生日

「……記念日」 「…え?」 「………記念日だったね…付き合って一年の…」 「……ああ、あ、忘れてた ほんとだね」 秋は目を丸くして驚いた後、ふふ、と笑った。 「一年たったんだね」 「……うん…何も出来てなくてごめんね…」 「ええ?いや俺もなんも…忘れちゃってたくらいだから」 「……また…ご飯行こっか…?」 「ええ!行きたい行きたい」 春がゆるい笑顔で微笑む。 そうして春はんん…と起き上がり、喉乾いた、とベッドを出た。 そうして水を飲んできて布団に再び潜り込み、ぱちぱちと元気よく瞬きをした。 それに秋がふふ、と息を漏らして笑う。 「目、覚めちゃった?」 「うん…」 そうしてまたすっと二人は寄り添い、秋がそういえば、と尋ねる。 「春って服どこで買ってるの?」 昼間春のクローゼットを探ってふと思ったことだったが、春は普段忙しくてろくに買い物も行けていないはずだ。 それに異様に機械に疎く、通販なども全く使ったことがないらしい。 しかし春は季節ごとにきっちりと服を買い揃えているようで、いつもいつのまにか服が新しくなっている。 「スタイリストの人が季節ごとに服選んで持ってきてくれて…そこから選んで買い取ってるよ」 「へえ…じゃあ春の好きなブランドとか…なんかそういうの知ってくれてるの?」 「うーん…多分…?あんまりこだわりないから伝えたことないけど…でも選ぶやつがいつも同じところのやつだから…それで揃えてくれてるのかも」 そう言って春は、服買いたいの?と秋に尋ねた。 秋はあー、まあ…と歯切れの悪い返事をした。 「何が欲しいの?」 「な、何?え、えーー…」 そうしたまた歯切れ悪く答えた後、春は今服だったら何欲しい?と尋ねた。 「服?服…」 「Tシャツとか?もうすぐ夏くるし…あ、でも春だから羽織?シャツ?みたいな…いやでもあんま…普段そういうの着てないよね…なんかあれか、薄めのパーカーみたいな…そういうのがレッスンとかでも着れていい?みたいな?」 そう秋が早口で言うと、春がふふ、と息を漏らして微笑んで言った。 「なんか買ってくれようとしてるの?」 ズバリそう言い当てられ、秋は言葉を詰まらせ固まった。

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