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第19話-7 春の誕生日

「秋の歌好きだから」 そうまっすぐな目で見つめて春に言われ、秋はカーッと頬を赤くした。 「え、ええ……嬉しい…けど……でも本当にそんなのでいいの?」 「うん でも忙しいだろうから…いつでもいいよ」 「いや!誕生日に間に合わせる!」 「…ふふ、無理しないでね」 そう言って笑った春に、秋はめいっぱいの力で抱きついた。 ―― ―― ―― ―― そうして迎えた春の誕生日当日。 その日は春の所属するアイドルグループのデビュー1周年ツアー、東京公演の中日だった。 秋は春が希望したカレーライスを仕込み、緊張した面持ちで春の帰りを待っていた。 日が回って一時間ほど経った深夜1時頃、玄関のインターホンが鳴った。 いつもなら鍵を開けて入ってくるはずなのに、と玄関に向かうと、ガチャ、と扉が開き、秋は目を見開いた。 そこには、松永に抱えられ、力無く項垂れる春の姿があった。

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