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第19話-13 春の誕生日
春は大粒の涙をボロボロとこぼし、それが頬を伝って何度も秋の肩に雫がこぼれ落ちていった。
春の表情は変わらず、ただただ溢れる涙だけがこぼれ落ちている。
「……ごめんね ごめん……ごめん…」
そう何度も呟きながら、春は涙をこぼしてただゆっくりと腰を動かした。
けれど結局春はそのままいくことなく、秋の中に入ったそれは次第に張りをなくし、春はそのまま秋の上に倒れ込んだ。
そうして小さく肩を震わせ始めた。
秋は突然の春の涙に混乱し、そのまま秋の上に倒れ込んだ春をただ強く抱きしめた。
「……どうしたの?
…なんで泣いてるの?
なんで…謝ってるの?」
そう尋ねても春はただ震えて泣くばかりで、春が初めて見せる大きな感情の波に驚いて秋は言葉を詰まらせる。
ふと、頭をよぎる。
先日覗き見た、春の日記だ。
秋と春が付き合うことになった日の日記。
そこにはただ一言、 “ こわい " と書かれていた。
震えて泣く春はまるで何かに怯えているようで、秋は小さな声で尋ねた。
「……こわいの?」
すると春は声を漏らし、震えて泣きながら小さな声で言った。
「……こわい…」
秋はその春の答えに再び言葉を詰まらせた。
しかしそれでも必死に言葉を紡ぐ。
「……何が…何が怖いの?」
春が言った。
「……最後は…ひとりになるのに」
「…秋の時間…奪って…甘えて…」
「…最低……最低…」
秋は胸を切り裂かれるような気持ちになった。
「……なんで…なんでそんなこと言うの?」
春はただ震えて泣き続けている。
秋は少し体勢を起こして上に乗っていた春をベッドに乗せ、そうして寝そべって泣き続ける春の顔を両手で掴んだ。
春の顔は苦痛に歪み、頬はすでに何度も流れ落ちた涙で濡れていた。
春の目線は伏せたまま、秋のことを見ない。
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