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第19話-16 春の誕生日
そうして家を出る準備のため、二人がリビングに移ってから、春は恐る恐ると言った様子で手当たり次第に秋に謝ってきた。
カレー作ってくれたのにごめんね、とそれから始まり、昨日のことを何とか思い出しているのか、春は酔ったことや何も覚えていないこと、迷惑をかけたと何か行動をするたび思いついたように散々謝った後、次には昨日とは関係のない、シャンプーいつも使いすぎてるかもごめんね、とか、そういったことまで謝り出した。
秋はそれについに吹き出して笑ってしまった。
「もう…怒ってないから、春」
そう言って不安そうな顔をしている春のそばに秋は寄る。
そうしてそっと春の頬を撫で、言った。
「…春、昨日フラフラで…でもシャワーどうしても浴びたいって言ってさ、一緒に入ったの」
「…ごめんね」
「違う、謝って欲しいんじゃなくて…」
そうして秋は続けて言う。
「ずーっとされるがままでぼーっと洗われてて…なんか…ちっちゃい子供みたいで……髪乾かすよ、って言って乾かす時も何も言わないでじっーとして…それがすごい可愛くて」
「…好きだなぁって、いっつも思ってるけど…昨日もまた、またそう思ったんだよ」
「…早く帰ってこないかなあって、毎日…毎日思ってるけど、昨日もそう思ってて、…だから帰ってきてくれて、もう飛び上がるくらい嬉しかった」
「好きだよ、春」
「誕生日おめでとう…二十歳、おめでとう」
秋の言葉に、春はやっと少し照れくさそうに微笑んで、ありがとう、と小さな声で言った。
「さっき言ったこと忘れないでね」
「…うん」
「ちょっとでも…忘れたら怒るからね」
「…うん」
そうして秋はゆっくり顔を寄せ、唇が触れるか触れないか、と言ったところで顔を止めた。
そうして春をじっと見つめて言った。
「…して 春から、して」
伏せた目を春は秋に合わせ、そうしてまた目を伏せて、手を伸ばして秋の頬にそっと手のひらを添え、優しくキスをした。
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