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第20話-1 兆し

春と秋はまだ火照る身体をベッドに投げ出し、裸のまま互いに手を伸ばしてそっと抱き合っていた。 春は秋の腰に手を伸ばし背中を優しく撫で、秋は春の髪を撫でている。 「…気に入った?」 秋がそう尋ねると、春は嬉しそうにそっと微笑んで頷いた。 「……本当に?」 秋が少し不安そうに尋ねると、本当だよ、とまっすぐ目を見て春は言った。 春の誕生日翌日、昼過ぎに春は家を出て、グループのデビュー1周年ツアーの東京公演を終え、帰宅した。 そうして待ち構えていた秋は春を秋の部屋に連れて行き、そこで春の誕生日プレゼントとして、春が秋にねだって作った春への曲を、歌って披露した。 秋は緊張する、と微笑みながらそれをしっかりと歌い上げ、春は終始それを優しい瞳でみつめ、そっと微笑んで耳を澄まして聴いていた。 時折目を伏せ、しかし秋の歌う表情を見逃すまいとするように、またすぐに視線を秋に向け、というのを何度も繰り返していた。 歌い終わって秋がどう?と恥ずかしそうに尋ねると、春は秋の腕を引いてありがとう、と言いながら秋を抱きしめた。 そうしてそのまま2人はその気持ちの昂りをぶつけ合うように、身体を重ねたのだ。 「……いつリリースするの?」 そう春が尋ねると、秋はえ?と言った。 「あ…いや、これは春へのプレゼントで作った曲だから…するつもりなかったけど…」 「……そうなの?」 「うん」 「………みんなの前で…歌わないの?」 春が小さな声でそう尋ね、秋はん〜…と少し悩んでから、ふっと春の目を見つめた。 そして言った。 「……歌って…ほしい?」 春は目を伏せ、何度か瞬きをしてから、そのままうん、と言った。 それに秋はニィ〜と笑い、そんな春の目を覗きこむようにして尋ねた。 「……なんで?」 春はまた秋から目を逸らし、いい曲だから、と少しの間を置いてからそう言った。 しかし秋はまたそんな春に目を合わせ、ニヤリとしながら尋ねる。 「……みんなの前で…春のこと好きって…歌って欲しいの?」 秋がそう言うと春は徐に秋の胸に顔を埋めた。 ふふ、と秋は喉を鳴らして小さく笑い、そんな春の髪を優しく撫でて言った。 「……じゃあ歌っちゃお、みんなの前で…何回も何回も」 春は秋の腕に包まれ、秋の胸に顔を埋めて、ただ黙ってずーっと静かに息を繰り返していた。 秋はそんな春の頭に頬擦りをして、ぎゅーっと春を抱きしめた。 「……ありがと」 しばらくそうしたままいると、秋の腕の中で小さく、春がそう言った。 秋は腕を緩め、少し身体を後ろに逸らして春の顔を覗き込んだ。 春は今だに目を伏せ、照れくさいのか、嬉しいのか、それとも悲しいのか、そのどれとも分からないような、自分の気持ちがバレないように、必死に表情を固くしているようだった。 秋はそんな春の額にちゅ、と唇を落とす。    そうして続け様に頬に、反対の頬にも、また額に、鼻先に、と軽くキスを繰り返し、そうして最後は春の唇に口付けた。 秋のキスによって春は俯くように引いていた顎をそっと上げ、そうして隠しているその本心を溢れさせるように、秋の舌に絡みついた。 春の手は先ほどのようにまた熱くじっとりと、そうして時々くすぐるように秋の身体を撫で始め、秋はそれにんん…とキスをしながら唸った。 「……また勃っちゃった…」 そう言って秋が思わず春に腰を撫で付けると、春は困ったように笑って、弱々しく言った。 「………もう…出ない…」 その春の言葉に秋は先ほどからくるりと表情を変え、あはは、と声を出して笑った。 そうして覗き込むようにして言った。 「……3回もしたもんね」 秋はそう言い、それでも我慢ならずに春に腰を撫で付け、また春に舌を伸ばしてキスをする。ねっとりと舌は絡み合い、いやらしい音が再び部屋に響いた。 秋が甘えるように言った。 「……春…手でして?」 秋のその言葉を聞いて、舌を絡めあいながら、春は秋のそれをゆっくりと手で擦りはじめた。 優しく、しかしきちんと秋のそれを締め上げる手に、秋は吐息を上げる。 すると、秋の太ももに触れていた春のものが、触れたその肌を強く押し返すようになったのが分かった。 秋はそれにニヤリとして、春の耳元で言った。 「………まだ出るんじゃない?」 そう言うとふふ、と鼻先を鳴らして少し笑ったのが分かった。 そしてすぐに、秋を再び押し倒すように上に覆い被さった。 春は腰を何度かいやらしく秋に撫で付けた後、そのまますぐにものを秋の中に差し込んだ。 そうして2人はまた、一つに重なり合った。

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