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第21話-2 忙しい日々
――
春がご飯とシャワーを終え、秋を起こさないようにそっとベッドに入った。
すると秋がんん…と小さく唸り、ゆっくり瞼を開けた。
そうしてすぐその視線は春を捉え、春の腕を引いて春を引き寄せた。
「…ごめん、起こしちゃった?」
春がそう優しく言うと、秋はおかえり、と小さくつぶやき、春の胸に甘えるように顔を擦り寄せた。
春はそんな秋を優しく撫で、そっと腕で包み込んだ。
すると秋は安心したように、すぐにまた寝息を立て始めた。
ふっとその顔を覗くと、秋は口をぽっかり開けて気持ちよさそうに眠っていて、春はふふと息を漏らして微笑んだ後、そっと秋の口を閉じるように唇を押さえた。
「…喉痛めちゃうよ」
しかし春が手を離すと、また秋の口はぽっかりと開き、春はそれを幾度か繰り返してまた微笑んで、そしてそのまま秋をそっと抱きしめてから、春も瞼を閉じて眠りについた。
――
翌朝、自分がかけたアラームで秋は目を覚ました。
「…しゅん…」
いつものように春に声をかける。
これまでなら起きてすぐ、春の眠る顔をしばらく眺め、それを堪能してすっかり目が冴えた頃、春のことを起こし始めていたのだが、今はそうはいかない。
寝ぼけたまま春に声をかけ、春と共に目を覚ましていく、というのが最近のルーティンだった。
「春…おきて……」
そうして優しく春を揺り起こす。
しばらくして春がもぞもぞと動き出し、まだ寝ぼけたままの秋を見上げるようにして目を覚ました。
「…おきたぁ…?」
秋がそう言うと、春はうん…と小さな声で言った後、秋に擦り寄り、くすぐるように秋の首元にちゅ、と軽く唇を落とした。
んふふ、と秋は小さく笑い、そんな春の額に秋も軽く唇を落とす。
秋が言った。
「……今日は起きて待ってるね」
「…寝てて良いよ」
「……ううん…起きて待ってる」
秋がそう言うと、春は秋の顔を覗き込み、それからそっと微笑んで、うん、と言った。
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