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第21話-7 忙しい日々
「大丈夫?」
いつもなら春がそう秋に尋ねるのに、今日は秋がそう尋ねた。
すると春は小さく頷き、秋も大丈夫?とまだ吐息混じりに尋ねた。
秋は掴んでいた春の手をそっと離し、春の方にころんと寝返りを打った。
そうしてまた春の手をそっと掴んだ。
「…疲れたね」
そう秋が言うと、春が小さく吹き出して笑った。
秋もそれに釣られて笑う。
「ねえ春」
「ん?」
「してなかった間…春抜いた?」
秋のその質問に春は少し微笑んで、ないしょ、と言った。
「内緒ってそれ…してるじゃん」
「さあ」
「えへへ、言ってよ」
「…言わない」
「なんでぇ〜?」
そう言って秋は春に頬を寄せすり寄ると、春が尋ねた。
「…秋は一人でしたの?」
すると秋はにひひ、と笑って言った。
「したよ 春が帰ってくるの待ってられなくて」
その答えに春が息を漏らして小さく笑った。
「…ねぇ春は?」
「…言わないよ」
「なんでぇ、俺言ったのに」
春は笑いながら秋に顔を背けるようにしてその質問から逃げる。
それでも秋がそんな春を引っ張って無理やり向かい合わせにして、また同じ質問を繰り返した。
「ねえ、した?」
春は困ったように微笑みながら瞼を閉じる。
秋はそれにころころと笑い声をあげ、ねえ〜と何度もすり寄る。
そうして答えない春に、秋は質問を変える。
「どこでした?」
春は目を閉じたまま少しだけ口角を上げる。
秋がまた何度もそう尋ねると、春が目を閉じたまま繋いでいた秋の手を強く引いて抱き寄せて、そして言った。
「…シャワー」
秋はその答えににんまりと笑い、尋ねる。
「…お風呂でしたの?」
すると春はふーっと息を吐き出して、シャワー行くよ、と秋を起こした。
「…え、どっち?さっきのどっちの意味で言った?」
けれど春はもうその質問には答えず、ただ微笑んで行くよ、と秋を寝室から連れ出した。
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