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第22話-2 災いの中のひととき
仕事場についても頭痛は治らず、秋は再び頭痛薬を飲んだ。
そうしてなんとか1本目の収録を終えた秋に、マネージャーから一応測ってください、と体温計を手渡された。
今ワイドショーではコロナの話題で持ちきりだ。
コロナ禍は第三波に突入し、感染者の数は日に日に増え、過去最多と毎日のように報道されていた。
コロナは春と秋の仕事にももちろん大きく影響を与えていた。
秋の新曲リリースライブツアーは観客数を大幅に減らしてキャパ50%制限で行うことになり、バラエティの収録もクリアパネルを用いて飛沫感染防止が徹底されていた。
年末年始に恒例で行われている春の事務所ライブは無観客での実施が決定され、ドラマや映画の撮影も撮影時以外は常にマスクの着用を義務付けられていた。
今日秋がテレビ局へ入る時にも検温は実施され、秋はそれをクリアして収録に臨んでいた。
頭痛もただ多忙ゆえに、と軽く考えていた。
しかし実際に手渡された体温計が表示した数字を見て、秋はどうしよう…と弱々しく呟きマネージャーに絶望の表情を向けた。
38.7℃。
マネージャーはその数字を見てため息をつき、「病院行きましょう。」とだけ秋に言い、すぐにその日の仕事を全キャンセルにした。
そうして何重にもマスクを重ね、秋は人に接触しないよう挨拶もせぬままテレビ局を抜け出し、マネージャーの車で病院に向かった。
そうして結局、PCR検査を行い陽性反応が出て、秋はコロナウイルスへの感染を告げられた。
家に送り届けられてすぐに秋は自室にこもり、春にメッセージを送った。
" コロナなっちゃった 熱ある 絶対部屋入ってこないで "
秋は普段作業時に膝掛けにしている小さな毛布に包まり、秋の作業部屋の床に転がった。
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