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第24話-2 好きなところ

ベッドに入ると、秋は決まって春を抱き寄せて、小さな声で話し出す。 眠い?と尋ねてきて、ううん、と言うと、本当?と伺うような視線をやるのだが、まだ話し足りない、と言った様子で話を続ける。 その声と秋から伝わる温もりがなんとも心地よくて、春は話を聞きながらふっと瞼を閉じてしまう。 すると秋はふと話をやめ、そんな春にすり寄るようにして顔を寄せる。 そうしてじっと動かずいた後、ちゅ、と軽くキスをして、春をぎゅっと抱きしめてから眠りにつく。  朝はいつも、秋の優しい声で目が覚める。 秋が忙しくなってからも、秋はいつも少しだけ早く春を起こして春に甘えた。 寝ぼけながらも秋がそうやって求めてくれるのが嬉しくて、春はいつもそれに応えた。 家を出るまで何分?と春が尋ねると、少し恥ずかしそうに何分、と言う秋が愛おしくて、春は分かっていても決まってそう尋ねた。 秋が声をあげて身体を反応させるたび、春はとても嬉しくて、そしてその度に安心した。 秋の恋人としてそばにいていいんだ、と思えた。 身体を重ねるたびに秋に大丈夫だよ、と言われているようで、これまで長く認めることができなかった自分自身が肯定されるような気がした。 あれをして、これをして、と秋がねだってくれるのが可愛くて、そんな秋に震えるほど欲情した。 そしてその気持ちを抑えきれずぶつけても、秋は終わると微笑んで嬉しそうに春が好き、といつも伝えてくれた。 初めて秋と身体を重ねてからしばらくは、春はそういった行為の後はなんだか気持ちが落ちてしまった。 秋は本当は嫌だったかもしれない、そんな不安が頭に渦巻いて、やっぱり男じゃ無理だ、春じゃ無理だと言われる恐怖に苛まれた。 秋に欲情する自分に嫌悪感すら抱いた。 それでも何度も秋が求めてくれて、そんな秋に触れるたびに春のそんな不安は次第に和らいでいっていた。 自分から触れるなんて怖くてできなかったけれど、秋に許されるたび、秋が求めてくれるたび、秋から触れてくれるたび、そんな恐怖もいつしか和らいでいった。 秋が好き。 秋のことを考えるといつも、胸がぎゅっと苦しくなるほど、春は秋が好きだった。 いつまでこうして秋と一緒にいられるんだろう。 いつか秋がいなくなった時、これまで通り生きていける自信が春にはなかった。 こんなに好きな人には、もう一生出会えないだろう。 いつもそう思った。 これだけ幸せを与えてもらっているのに、いつか来るかもしれない別れを思う自分の臆病さに嫌気がさした。 それでもいつも秋は優しく笑って何度も好き、好きと伝えてくれた。 ずっとなんて言わない。 でも、なるべく長く、秋と一緒にいたい。 春は毎日そう願っていた。

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