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第24話-3 好きなところ
「…ん、春」
秋の優しい声がする。
春はそっと手を伸ばす。
秋の頬に触れる。
伸ばした手にそっと、秋の手が触れるのが分かった。
あったかい。
「…好き」
ああ、言っちゃった、と春は少しだけ後悔する。
自分の好きがいつか秋を縛りつけるんじゃないか、秋がやっぱり違ったと思ったら、その手をすぐに離せるようにしておかないと。でも、そうやって言葉にするたびにさらに自覚してしまう。
秋が好き。
秋には笑っていて欲しい。
そこに自分が居なくとも、それでも仕方ないと思った。
でも、それでも、今は、今だけは――。
――
「…好き」
春が眠り始めて2時間ほど。
秋はホットプレートを片して、残ったお酒を飲みながらじーっと眠る春を見ていた。
しかしせっかくの貴重な二人の休み、そろそろ起こしていいかな…とソファに横たわる春に声をかけた。
すると春はすぐに薄く目を開いて、手を伸ばして秋の頬に触れた。
秋はそっとその手を包んだ。
すると春は、つぶやくようにそう言ったのだ。
秋は目を見開いて、すぐに顔を綻ばせ、寝ている春に抱きついた。
「俺も!俺も好き!大っ好き!」
あまりに強く締め付けたからか、春はんん〜…と小さく声を上げる。
それでも秋は気持ちが収まらず、春を変わらず強く抱きしめた。
そうして何度も春にキスをすると、春はお酒の匂いする…とぼんやり呟いた。
それでも春は少し微笑んでいて、秋はやめられず何度も春の顔の至る所に唇を落とした。
そうして春がゆっくりと起き上がり、秋は床に腰を下ろしたまま春の足の間にちょこんと座り、春の太ももに顔を乗せた。
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