188 / 236

第24話-3 好きなところ

「…ん、春」 秋の優しい声がする。 春はそっと手を伸ばす。 秋の頬に触れる。 伸ばした手にそっと、秋の手が触れるのが分かった。 あったかい。 「…好き」 ああ、言っちゃった、と春は少しだけ後悔する。 自分の好きがいつか秋を縛りつけるんじゃないか、秋がやっぱり違ったと思ったら、その手をすぐに離せるようにしておかないと。でも、そうやって言葉にするたびにさらに自覚してしまう。 秋が好き。 秋には笑っていて欲しい。 そこに自分が居なくとも、それでも仕方ないと思った。 でも、それでも、今は、今だけは―――― 「…好き」 春が眠り始めて2時間ほど。 秋はホットプレートを片して、残ったお酒を飲みながらじーっと眠る春を見ていた。 しかしせっかくの貴重な二人の休み、そろそろ起こしていいかな…とソファに横たわる春に声をかけた。 すると春はすぐに薄く目を開いて、手を伸ばして秋の頬に触れた。 秋はそっとその手を包んだ。 すると春は、つぶやくようにそう言ったのだ。 秋は目を見開いて、すぐに顔を綻ばせ、寝ている春に抱きついた。 「俺も!俺も好き!大っ好き!」 あまりに強く締め付けたからか、春はんん〜…と小さく声を上げる。 それでも秋は気持ちが収まらず、春を変わらず強く抱きしめた。 そうして何度も春にキスをすると、春はお酒の匂いする…とぼんやり呟いた。 それでも春は少し微笑んでいて、秋はやめられず何度も春の顔の至る所に唇を落とした。 そうして春がゆっくりと起き上がり、秋は床に腰を下ろしたまま春の足の間にちょこんと座り、春の太ももに顔を乗せた。

ともだちにシェアしよう!