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第24話-4 好きなところ
春がまだ眠そうな、でも優しい顔で秋を見つめている。
「…お酒全部飲んだの?」
「飲んだ!」
「すごいね、秋はお酒強いんだね」
「でもちょっと酔っ払ってるよ」
「ほんと?…見えない」
そう言って春はそっと秋の髪を撫でて続けて言った。
「…どうやったら強くなるのかな」
「強くなりたいの?」
「…うん」
秋はふふ、と微笑んで、なんで?と尋ねた。
「一緒に飲めるから」
「俺と?」
「…うん」
秋はその言葉にあああ…と唸って春にまた抱きつく。そして言った。
「でもさ、いつかおじいちゃんとかになってさ、一緒に夜晩酌とかするのちょっと楽しみかも」
そう言って秋はちらり、と春の顔を覗く。
春はそれに何も言わず、ふっと優しく微笑んだままだ。
「でもジュースでもいいよ?春がいてくれたらそれでいい」
春は優しく笑って、ただそっと秋の髪を撫でた。
「夜どうしよっか、ご飯」
「ホットプレートは?」
「したい?…全部食べちゃったんだよね」
秋がそう眉を下げて言うと、春はあはは、と笑った。
「いっぱい食べたね」
「うん…お酒飲むと胃がバカになるんだよ」
「そうなの?」
「うん、いくらでも食べれる」
「春お腹空いてるでしょ?」
「んー…」
「だってちょっとしか食べてなかったでしょ」
「うーん…」
「…スーパー行ってこよっかな」
「今から?」
「うん」
「え、いいよ 秋がお腹空いたら出前とか取る?」
「えーだめ、俺が作る」
そう言って秋はずっと立ち上がる。
そんな秋を春が見上げて言った。
「…一緒に行く?」
その言葉に秋は一瞬顔を輝かせたが、ハッとして首を横に振る。
「松永さんに怒られる」
「…じゃあ僕が行こうか?」
「いいよ、何作ろっかな〜って考えながらスーパー行くの楽しいんだから」
そう言って秋はそそくさとダウンを羽織り、カバンを持って玄関に向かった。
春もそれにてこてこと着いてくる。
「じゃすぐ帰ってくるから」
「うん」
「ん!」
そう言って秋が顔を差し出すと、春は微笑んでそっとキスをした。
「…お酒くさい?」
「…うん」
そう返事をして春はふふ、と息を漏らして笑う。
そしてそんなに飲んで歩けるのすごい、と言った。
「気をつけてね」
「うん」
そう言って秋はニヤリとしてまた春に口付けをして、家を出た。
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