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第25話-6 炎上

そうして霧峰はすっと秋を見て、言った。 「あなた、本気で春と付き合ってるの?」 秋はすぐに慌てた様子で、はい、と何度も頷いて見せた。 「どれくらい?」 「…え?ど…どのくらいって…」 「春とのことがこうして世間にバレて、あなた仕事全部失うってなっても、それでも春と一緒にいるの?」 秋はそれに、不思議そうに頭を傾げて、言った。 「…はい」 「…何よ、その煮え切らない返事 迷ってるってこと?」 「いや違います! お、俺は…それでも一緒にいたいですけど… 春がそう思ってくれるかは…その… 分かんないなって…」 「仕事無くした今瀬くんには価値がないって思うだろうって?」 「い、いや! …そんなこと思うような人じゃないだろうけど…… 春は多分すごい気にすると思うから 自分のせいで、とか ……それで春が悩んでしんどくなるなら…俺のわがままでずっと縛りつけるのは…違うって…思う……けど…でも…… …本当は…… ずっと…一緒にいたいです」 そうまっすぐ霧峰の目を見て言った秋に、霧峰は満足そうに微笑んだ。 そうして桐生をチラリと見て、尋ねた。 「そちらの結論はどうなったの?どういう対応?」 「まあ、何か聞かれたら会社としては、プライベートは本人に任せてます、くらいはコメント出そうかなぁと 正直なところ、こっちは壱川春様々と言ったところというか…今瀬の名前知ってもらえる良いチャンスかなくらいに思っちゃってる節があるんだよねぇ」 そう言って桐生は豪快に笑った。 霧峰は呆れたような顔をして、そうして秋の方を向いた。 「君はどうするの?」 「俺は…………ただの友達だって…言おうと思ってます」 霧峰は秋を覗き込むようにして尋ねる。 「なんで?」 「え、な、なんでって…春が…嫌だろうから」 「何が?」 「俺と…っていうか……男と付き合ってるとか…そういうの…知られたり…するのが…嫌だろうって」 霧峰はその秋の答えに一息置き、そして言った。 「今瀬くんって、嘘つけない人でしょう」 「え…?あ……ああ…そうですけど…でも……」 「今瀬くんはさ、この記事が出て、自分が春と、男と付き合ってるって人に思われて、嫌だとは思わないの?」 「嫌…?…え、思いません」 「ゲイだって思われるんだよ 男が好きだって」 「別に良いです」 「気持ち悪いって言われるかもよ?そんなやつの歌なんか聞きたくないって、君の大切なもの、否定されるかもしれないよ?」 「別に…誰に何言われても……」 「気にならないんだ?」 「はい」 秋は続ける。 「俺は…ただ、春に伝えたくて…歌を書いてて それを…良いって思ってくれた誰かの気持ちに寄り添えて…力になれたなら嬉しいって…そう思ってて」 「そういう誰かを裏切ることになるかもしれないよ?」 「裏切る?」 「男に宛てて書いてるなんて思わなかったって」 「それがどうして裏切ることになるんですか?」 秋はまっすぐ霧峰を見つめたまま、言った。 「僕は誰も裏切ってません ただ…ただ人を、春を好きになって、その気持ちを歌に書いてるだけです 嘘もついてません 好きな人に書いたってずっと言ってます」 「でもただの友達だって言うなら、嘘をつくことになるよ」 「それは…」 霧峰は言った。 「下手な嘘つくくらいなら、君らしくいたら?」 秋はその言葉に黙り込み、しかし険しい顔をして俯いた。 そして言った。 「でも……春が…」 すると霧峰が秋の言葉を遮るように、あはは、と笑った。 不思議そうに秋は霧峰を眺める。 霧峰は笑いながら言った。 「春もおんなじようにさ、今瀬くんが何か言われるかもってそれしか言わなかったから…あなたたち、お互いのことばっかり!」 そうして言った。 「納得させてみなさいよ 春のファンもあなたのファンも 春のことも」 「ああ今瀬くんなら良いかなって 別に男同士でも何もおかしくないなって 今散々騒いでる人たちにそう思わせるくらいの歌、書きなさいよ」 そう言って霧峰は立ち上がり、松永に行くわよ、と声をかけた。 そうしてじっと考え込む秋に向かって、言った。 「春をよろしくね」 そうして霧峰と松永が去っていき、桐生は嬉しそうに笑って言った。 「相変わらず過保護だねぇ、志子ちゃんは」 そうして秋の隣に腰掛け、ガシッと秋に肩を組んでいたずらに笑いながら言った。 「壮大な使命を授かったことですし、これまで以上に頑張らないとね」 ―― ――

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