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第25話-7 炎上
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秋はそのままマネージャーの藤堂に連れられ、自宅に帰った。
自宅は出た時のまま様子が変わらず、春もまだ帰っていない。
秋は恐る恐る、電話をかけてみる。
するとすぐコールが切れ、もしもし、と春の声がした。
「あ、も、もしもし」
「うん」
「あ、今…帰ってきて…春は?」
「ホテルにいる …2週間くらいはここから通うことになって」
「あ、ああ…そ…そうなんだ」
沈黙が流れる。
秋が咄嗟に口を開く。
「ちゃんと…寝てね」
「うん」
「ちゃんと…ご飯も食べて」
「うん」
「…また、電話しても良い?」
「うん」
「……じゃあ…おやすみ」
「秋」
「ん?」
「…ごめんね」
秋は春のその言葉に、小さく息を漏らし、そして言った。
「……それ、最後にしよう」
「…最後?」
「謝るの 俺ももう謝るのやめる だからもう…謝らないで」
「…うん」
「俺も最後の一回だけ言っていい?」
「うん」
「ごめんね」
「…ううん」
「……春、好きだよ」
「………うん」
「秋も…ちゃんと食べて寝て」
「うん」
「……おやすみ」
「うん、おやすみ」
そうして秋はベッドに潜り込み、春の匂いが残る布団の香りをめいっぱい吸い込んだ。
春のファンも、自分のファンも、そして無闇矢鱈と騒ぎ立てる人々も、そして、春も。
自分に出来ることは何だろう。
秋は1人、目を閉じた。
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