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第27話-4 それぞれの翌日

―― ―― 時刻は19:30を過ぎた頃。 春はドラマの撮影を終え、所属するアイドルグループ「MELONY」の新曲MV撮影の為、都内のスタジオにいた。 グループでの集合カットを撮り終えてソロでの撮影に移り、順番を待つメンバーはみな控え室で自由に過ごしていた。 いつもならそういった空き時間はドラマなどの台本を覚える時間として使っている春も、その日は様子が違い、ただじっと椅子に腰掛け、しかしいつものように少しだけ口角をあげ、そこに佇んでいた。 メンバーらはその異変をなんとなく察しながらも、声をかけることはせず、極めていつも通りといった様子で過ごしている。 春と秋の事が世間に知れたその翌日、MELONYのメンバーたちは春から直接、秋とのことを聞いていた。 もちろんSNSで大きく騒がれていたこともありメンバーたちもすでに事は知っており、春はそんなメンバーたちに自身のセクシャリティを初めて打ち明けることになった。 メンバーである崎山李人(さきやまりひと)は、ただ椅子に座り過ごしている春をちらりと不安げに一瞥し、それから同じくメンバーの上条裕季(かみじょうゆき)に目を合わせた。 上条は崎山のその視線に気付き、崎山に向けて少し両眉を上げてみせた。そして何気なさを装い、ふらりと控え室の外へと出た。崎山もそれに続き、控え室を出る。 そうしてスタジオ端にある給湯室前のソファに2人は腰掛けた。 崎山が不安そうに言った。 「春…大丈夫かなあ…なんか…元気ないよね」 ほら、全然喋らないし…と続けた崎山に、上条はそれはいつもと同じだろ、とぶっきらぼうに返事をした。 崎山が続けて言った。 「知ってる?今日、今瀬くんMオンなんだよ 春に向けて書かれたって言う昔の曲やるんだって」 「熱愛報道でバズったからってここぞとばかりにって感じだな」 「あの日の春の顔思い出したら…なんか…SNSとか見てられなくってさあ…」 そう崎山が言い、2人は黙りこんだ。 報道の翌日の様子を、2人ともが思い出しているようだった。 ――

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