215 / 236

第27話-9 それぞれの翌日

「春」 控え室の入り口から、上条が顔覗かせ、春の名前を呼んだ。 春はそれまで身体に込めていた力を抜くように小さく息を吐き出し、振り返った。 「ごめん、順番変更、無理だってさ ライティングとかの諸々で」 「…分かった」 そうして立ち上がり控え室の外へ向かう途中、春は上条の前で一度立ち止まり、小さな声でありがとう、と言った。 何が?と上条は目線を外してそう言った。 しかし再びありがとう、と繰り返した春に、照れ隠しのように早く行けよ、とぶっきらぼうに吐き出した。 そうして春が去った控え室で、上条はおかしそうに笑って言った。 「…で、お前はまたなんで泣いてんだよ!」 そう小突かれておいおいとさらに泣き出す崎山を見て、日向と渡邊も声をあげて笑う。 そうしてぽつりと、日向が言った。 「…そりゃあさ、こんなん…春も好きになっちゃうよね」 その日向の言葉に、メンバーらはふっと微笑んだ。

ともだちにシェアしよう!