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第30話-3 初めての相手

―― ―― その夜、秋はいつもより一段とソワソワとして春の帰りを待っていた。 あの後、何とか秋は平常通りに振る舞い、無事に収録を終えた。 由緒は収録を終えた後、出演者皆に揃って挨拶をして、秋に特別声をかけてくることはなかった。 由緒に言われたことが頭を支配する。 “うちなぁ…春と付き合っててん” “…春の初めての相手はうちやねんで 手繋ぐのも、キスも、…そういうことも” もしかしたら由緒の冗談かもしれない。 バラエティ収録中も、由緒はどこか掴めない不思議な雰囲気を醸し、独特なユーモアでスタジオを沸かせていた。 ふと再会した時「あーあれ?いやいや、冗談やで?信じたん?」なんて言いそうだな、と思えるようなそんな人ではあった。 そうしてあーだこーだと騒ついた頭と心を落ち着かせるため、秋は気分転換にSNSを開いた。 するすると画面をスクロールさせていくと、とある記事で指が止まった。 【壱川春初の月9ドラマ主演!ヒロインは新進気鋭の新人女優・中野由緒が大抜擢】 落ち着かせる作戦は失敗だな、と、秋は観念して好奇心に負け、恐る恐る記事を開いて内容を確認する。 トップに躍り出たのはドラマのメインビジュアル写真。役に扮した春と由緒が、仲睦まじそうに寄り添って写っている。 じっとそれを見た後、秋は続けて記事の内容をチェックする。 【壱川春初の月9ドラマ主演!ヒロインは新進気鋭の新人女優・中野由緒が大抜擢】 ――“中学の同級生”の共演に早くもネット騒然! XXテレビ系“月9”枠の10月クールドラマで、大人気俳優でありトップアイドルとしても活躍する壱川春(21) が、ついに主演を務めることが発表された。作品は“大人になる直前の痛みと熱”を描く濃密なラブストーリー。ドラマ内には複数のラブシーンも予定されているという。 ヒロインには、オーディションで圧倒的な存在感を放った新人女優 中野由緒(21) が抜擢。近年稀に見る“本物の原石”として関係者から注目されていたが、まさかの月9ヒロイン決定のニュースに、業界内でも驚きの声が広がっている。 ◆オーディションで一気に頭角 “確かな演技力”が決め手に 制作スタッフによると、中野は最終面接で台本を離れたアドリブ芝居を提案し、感情の振れ幅を鮮やかに表現。その瞬間、会議室の空気が「彼女で決まり」に変わったと言われる。 ◆中野由緒、コメントで“中学の同級生”を告白 今回、由緒は出演決定にあたりコメントを発表したが、その内容が早くもネットをざわつかせている。 「春とは中学の同級生でした。まさか同じ現場で、しかも月9で再会できるなんて思ってもいませんでした。すごく嬉しいし、でも負けないように、全力でぶつかりたいです」 この“同級生”という一言に、SNSでは「え、同級生だったの!?」「リアル幼なじみ再会じゃん」「青春かよ」「キャスティング神すぎる」 など興奮混じりの声が相次いでいる。 ◆壱川の初月9主演 × 同級生ヒロイン“リアル関係性”が作品の熱量をさらに上げる 壱川の初月9主演に加え、同級生という意外な関係性によって、ドラマの期待値はすでに最高潮だ。 制作側も「二人の距離感は、芝居のリアリティに大きく寄与するはず」とコメントしており、現場では早くも“同級生コンビ”としての空気感が話題だという。 ◆濃密ラブストーリーで見せる“息を呑む化学反応” ドラマは、互いに心に秘密を抱えた若い男女が惹かれ合い、揺れ動く感情を丁寧に描く作品。壱川にとってはこれまでにない本格的なラブストーリー挑戦となり、複数のラブシーンにも注目が集まる。 実際に知り合いだった二人が、恋人役で激しい感情をぶつけ合う――そんな“設定と現実のリンク”が、視聴者の想像をさらに刺激している。 ◆ネットでは早くもトレンド入り 配役発表直後からSNSは大荒れ状態。「同級生」「春&由緒」「月9主演」が軒並みトレンド入りし、ファンの間では「尊すぎる」「リアル同級生でキスシーン…心臓もたん」 「青春の延長戦が月9で見られるとは」などの声が相次いでいる。 ◆放送は10月スタート “最強同級生コンビ”が月9でどんな恋を描くのか、そして壱川春の新たな代表作となるのか――期待は高まるばかりだ。 記事のビューはすでに何十万件を回っており、SNSのトレンドはドラマや春のことで埋め尽くされている。 そうして関連で回ってきたドラマ公式のSNSアカウントのポストが目に入ってきた。 それはドラマの告知映像のようで、撮影合間の春と由緒が話しているような動画だった。 意を決して、秋はその動画を再生した。

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