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畔でなら
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投げ出された絨毯は雲の上のような肌触りなのに、まるで地の底に墜とされたような疎外が翠流を包んだ。
「まあ、何よみじめったらしく、ちょっと手を添えたくらいで女嬬 みたいによろめいたりして! そんなのだからこの子、十二星宿ももうとっくに巡ったというのに、まだ星の声も聞こえないのよ!」
疎外は、何より痛感している汚点を突かれ、烈しい劣等に変わる。
泣いては、いけない。こんなところで。
温い星露のような涙を流したとて、自分の頃にはとっくに『鍵』を有した姉たちの高慢な囀りや、神官となり昇殿に渡る兄たちの蔑視と溜め息を増長させるより外ないのだから。
すぐ上の姉は上座をふり仰ぎ、簪に攫われた星がまたしゃらりと鳴った。
「大祖父様、しかもこの子、まだ『土』とふれあうのをやめようとしないのよ!」
「琉璃姉様……っ」
「私たち天人は、天界の星のごとく地上に恩恵を降り注ぐことだけを考えていたらいいのに。
それなのにまあ、あんなみすぼらしい牛飼いなんかといつまでも仲良くして……、」
牽牛のことは、悪く言わないで!
それが舌を突いたのに、光年の彼方から射るような視線が抗いがたい掌のように翠流を掴んだ。
玉座に控える星翁の、白い雲河のような眉と髭に隠されてはいるが、未だ星雲のような煌めきを絶やさないその眼に掌中のごとく据えられている。
その眼は、周囲の小雀を諫めるわけでも、もっと稚 い雛のような翠流に理 を示すわけでもない。
ただ、その眼 に浮かべるだけ。翠流という小さな星の輪郭を。
そこに自負や自尊を誇示できない翠流は、依然取り囲む兄姉たちの氷星の嗤いに竦み、ただ敷織に手をついて冷たい漣が去るのを持つ術をしか持たなかった。
この宙 は、天と地。
だけど、本当はその輪郭は繋がっていて、 ただひとつになれるのではないの?
天の帝様。銀河を流るる御 使いの星々様。
僕は。
僕は、ただ潤いの雨を宙から降らせるのみではなくて、
本当は、あたたかな大地のそのみなもとにも、
そっとふれてみたいのです……。
どんなに祈りをこめても。このちっぽけな腕を天空にかざしてみても。
神も、星も、その声を聞かせて応えてくれはしない。
波紋が落ちる。天色 をおとし尽くした深遠博大な大河の喉に、小さな小さな涙粒が吸いこまれてゆく。
ここでなら、泣くことが出来た。
銀河を鏡に映し、地を抱 く天の川でなら、どんな卑小さも、星の声も聞こえない半可者でも、
何もかも受け容れて『認めて』くれるような気がしたから。
——そして、畔 でなら……。
「やあ……」
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