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 和生は気にしていないようだが、倫はあたふたと慌てた。 「僕。僕、何て失礼を!」  だが、和生は首を横に振った。 「怜士さまは、怒ってはおられなかったよ。逆に、少し楽しそうだった」 「楽しい……?」 「こんなに堂々とした子は、初めてだ、とおっしゃってね」  くすくすと笑う、和生だ。  ヴァージンの倫に、少々意地悪が過ぎた。  罪滅ぼしに事後の体を拭き清め、自らここまで運んで来た。  そう、怜士は和生に説明したという。 『しかし、怜士さま。何も、このような下々の住まいに、お越しにならなくても』 『素敵なひとときを過ごさせてもらった、倫へのお礼だ』 『恐悦至極に存じます』 『彼が目を覚ましたら、ありがとうと伝えておいて欲しい』 『かしこまりました』  そんな怜士と和生が交わしたという会話に、倫はようやく落ち着いた。 「じゃあ、怜士さまは怒ってはおられないんですね?」 「そうだよ。安心して、ゆっくり休むといい」  は、と倫が壁に掛けられた時計を見ると、すでに深夜1時を回っていた。

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