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「ごめんなさい、和生さん。こんなに遅くまで待っててくださって」 「いいんだよ。それより、倫くん。明日、起きられそう?」 「え? あ、はい。……多分」  怜士のベッドで仮眠をとったとはいえ、初めての情事を体験した後なのだ。  倫の体は重く、ところどころが痛く、そして強い倦怠感を示していた。  そんな彼を、和生はいたわった。 「無理して起きて来なくても、いいから。10時のティーブレイクだけ、お勤めできればいいから」 「……すみません」 「倫くんがいないと、怜士さまが心配なさるだろうからね」  さて、と。  和生はそれだけで、立ち上がった。 「私は、もう行くよ。倫くん、今日はお疲れ様」 「はい。ありがとうございました」  和生を見送り、倫はこてんと床に転んだ。 「ホントに……、疲れたよ……」  突然、別世界へ飛び込んで。  いろんな人たちと、出会って。  初めての経験を、済ませて。 「怜士さま……」  そのままウトウトしかけた時、突然電子音が鳴った。 「え? あ、これって!」  それは、怜士を追い落とそうと画策する弟・丈士からのコールだった。

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