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第九章 その翌日

 怜士の弟・丈士からのコール音。  それは、一人になった倫の部屋に、やけに響いた。 「そういえば……」 『夜、寝る前に一日の報告をしろ。それに、何か変わったことがあれば、すぐに連絡を』  丈士は、こんなことを言っていた。 「やっぱり、出なきゃダメだよね……」  この世界では、倫のポジションは彼の放ったスパイなのだ。  怜士の好意を裏切るつもりはなかったが、ひとまず通話を繋いでみた。 「も、もしもし。倫です」 『連絡が遅いから、こちらから掛けたぞ。怠慢だな』 「すみません」 『まあいい。今日の報告をしろ。何か、変わったことは無かったか?』 「はい。えっと……」  倫は、思い出しながら。  いや、そう言っても、忘れようもないことばかりだったのだが。  一日の出来事を、順を追って丈士に報告した。

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